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day after day & 武松昭男のphoto日記

こんな時代劇はじめて!!


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映画を紹介するあらすじの「古紙や糞尿を売り買いする最下層の仕事につく・・・」を見て、「せかいのおきく」を観に行ってきました。
http://sekainookiku.jp/

モノクロ映像の時代劇ですが「こんな時代劇ははじめて!!」です。言葉遣いも現代だし、お侍さんたちが刀を振り回す訳でもなく。
冒頭から、本作の企画テーマの一つであろう、資源を循環させ、自然を再生するための循環型の経済システムを表現した肥溜めの糞を掬いとるシーンには、ちょっとビックリ。モノクロで良かった、とのっけからそんな感じで随所に出てくる糞尿に、江戸は理想的な循環社会と言われるがそのシステム支えていた人たちの嗅いでいた町の匂い、人の匂い、そして生活の匂いがスクリーンから伝わってきます。なので、しばらくは日常生活にちょいと支障をきたす方がいらっしゃるかも(苦笑)。

便所の汚物である糞尿を汲ませてもらって、農家に肥料として転売する仕事をする人たちを「汚穢屋(おわいや)」と言います。汚穢屋と蔑まれながらも「糞がおれらの食い扶持だよ。あいつらの糞で飯食ってんだよ」というセリフも一聴すると自虐的ですが、こうした無限リサイクル・ループ(※)のおかげで、人口100万人とも言われた江戸の町並みは清潔に保たれ、新鮮な野菜を食べることができたとされています。

※糞尿を畑にまき、野菜をつくり、その野菜が人の口に入り、また糞尿になる。

江戸の人々は物資が豊かではなくても、知恵を絞ってわずかに残った灰や人間の排泄物さえも肥料として土に戻し、限られた資源を使い尽くしていました。そうした暮らしぶりが、自然に循環型の社会を生み出し、自然に恵まれた生活を営むことにもつながったのでしょう。
反対に、あふれるモノに囲まれ、それを使い捨てながら暮らしている現代の人々。本当の「豊かさ」はどちらにあるのか。そんなことを考えるきっかけとなる作品だと思います。

廃棄物処理業、リサイクル業に従事している人は一見の価値あり、というか観た方が良いです。糞尿をくみ取り、桶に入れ替え、時には手で掬い、そして桶を担いで動く汚穢屋(おわいや)の仕事ぶりをこれほど長く見たのは初めて。江戸時代はリサイクルの優等生だったんだよ、と偉そうに講釈を垂れてる自分が恥ずかしくなりましたもの。


by AKIO_TAKE | 2023-05-21 22:43 | movie