2020年 03月 29日
ごみ処理
ごみの処理は何のためにあるのか・・
それは人々が生活する町の公衆衛生のためです。事実、昭和45(1970)年に制定された廃棄物処理法の第1条には、「この法律は、廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔することにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする」と明記されています。
日本のごみ処理(廃棄物対策)はコレラの流行を機に本格化しました。安政5年(1858)年の全国的なコレラの流行に始まり、明治12(1879)年・明治19(1886)年にはコレラの死者数が10万人台に達したという記録が残されています。これにより、水環境の改善を図るため、明治23(1890)年に「水道条例」が制定され、明治30(1897)年に「伝染病予防法」、明治33(1900)年に「下水道法」が、そして現在の廃棄物処理法につながる「汚物掃除法」が制定されました。上水道や下水道の整備とともに、ごみ処理も公衆衛生の向上に大きな役割を果たしてきました。
法の名称からわかるように日本のごみ処理(廃棄物対策)の目的の第一は公衆衛生の向上にあった時代が長く続き、そして公衆衛生の向上のため、ごみは直接埋め立てるのではなく、「燃やす」という方法が選択され、家庭から出るごみ処理は当該自治体が処理を行います。当該自治体が焼却場の整備を進めた結果、日本は地球上で焼却炉が一番多い国となりました。
公衆衛生の向上は法の条文にも残されたままながら、ごみ処理目的の実際は、高度成長期は環境衛生から経済活動の産物の適正処理という方向にシフトし、2000年代になると、ごみを社会での物質の循環と捉え、環境汚染との関係を考える研究もおこなわれるようになっていきました。
しかし、それでもごみ処理の基本は居住環境や職場環境を衛生に保持することであって、ごみを衛生的に貯留し、すばやく居住や職場の環境から速やかには排除することにあります。
いま新型コロナウィルスが全世界で猛威をふるっています。SARSやMERSの時、日本では疑いのある症例が報告されましたが幸いにも、いまのコロナウィルスのような騒動には至らずにすみました。
公衆衛生とごみ処理という観点では、処分技術も進み、衛生状態を保持するライフラインも整い、目的の実際も変わってきているので、ごみ処理が貢献できる余地は少ないと思いますが、新型コロナウィルス騒動は改めて「ごみ処理」の基本がきちんと出来ているか等を見直す機会となっています。
by AKIO_TAKE
| 2020-03-29 23:57
| 環境