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day after day & 武松昭男のphoto日記

ごみも無味無臭へ

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ペットボトルをゆらせば風景は乱れ、水に溶け、コップに注がれ消えゆく。
なかなか印象に残る表紙です。

暮らしから四季が遠くなってから久しいですが、それは暮らしと一心同体のごみの世界でも同じ。
食べ物は防腐剤や加工技術の向上、包装資材の発達で、腐敗臭とはほぼ無縁に。性能向上著しいプラスチックや紙は、季節をつくらず、そして選ばずですから、通年の必需品となり、通年のごみとなる。公衆衛生の観点からは喜ばしいことですが、綺麗にすればするほど暮らしから潤いや趣も失われているのかも・・・そんな見立てで、ごみを観察してみると面白そうです。

ごみを処理する理由は、伝染病予防(※)からはじまり、現在の廃棄物処理法にも明記されている公衆衛生の向上をはかることです。しかし、戦後から約70年かけて行ってきた公衆衛生の向上としてのごみ処理も、そろそろ役目を終えて、目的を変えてよいと思います。

グローバル社会の形成により、世界各地から様々な資材・原料の調達が可能となり、製品化され、ごみとなり、そのごみが輸出されて、輸出先の自国では起き得なかった「ごみ問題」を発生させました。この現実から、もう何十年という年月が経っています。3年程前からは他国のごみの輸入禁止措置をとる国も出てきました。それぞれの国で生活が成り立つように「ごみ処理」をしていかなければ立ち行かなくなる危険性が指摘されています。

本書でも、ごみ収集車で集め、焼却施設で減量し、残った残渣を埋め立てる現存のシステムを踏襲している限りは、国連が推奨しているSDGs(持続可能な開発)のアプローチは私たちの国では浸透しづらいと指摘しています。じゃあ、どうすればいいということに対するヒント(考え方、捉え方)として読み取れるところもあります。

マニュアルや教科書は無いし、これまでの経験が効かないと心して取り組まなければならないのはシンドイですが、気は持ちよう。
今起きている騒動は人類に「その気」にさせるラストチャンスを与えているかのようです。

さて裏表紙です・・
風景も水もなくなった空ボトル。ここから、どうするのか・・地球が人類の振る舞いを試そうとしているかのようです。

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  • 単行本 : 252ページ
  • 出版社: 文芸社
  • ISBN-10: 4286212653
  • ISBN-13: 978-4286212654
  • 発売日: 2020/3/1


by AKIO_TAKE | 2020-04-21 14:56 | book