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day after day & 武松昭男のphoto日記

外観に惑わされ

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"里山"についての認識不足、深く反省中、経験不足が露呈。完全にイメージ先行、その外観に惑わされ、まさに木を見て森を見ずの典型です。里山の一部分に囚われ、全体を見渡さず、そもそもなぜ里山が形成されてきたのかをきちんと理解していなかった。この本を読んで、近視眼的でたこつぼ化している自分を見つけることが出来ました。

地域内で資源の利用が完結すること、その利用方法が持続可能なこと、この里山の本質をちゃんとわかっていなかったようです。

昔から比較的人口密度が高かったとされる日本において、生きていくために持続可能な農業を実現するには、生活を維持するために限られた土地と資源の中で、どうやって「地域ごと」に効率よい自給自足な生活を可能なものにするか。そういうことを突き詰めていった結果、人が手入れをしながら持続可能な環境にした場所が里山。

つまり、里山は手つかずの自然ではない。手入れをしなければ遷移が進んで、その地域で暮らす人々の生活を脅かしかねない。「自然はありのままに」という論も間違いではないけれど、それではそこで暮らす人々の生活が成り立たない。「自然を守ろう」「多様性を守ろう」なんてことではなく、里山の手入れはそこで生きていくために行われている。

そういう意味では人為的につくられた持続可能な場所とも言えるのですね。そういうことをしっかり認識できていなかったなと反省しています。つい、自然豊かなその外観に惑わされてしまっていた・・。

本のはじめに、「わたしたちは、長年にわたって地域ごとに培われてきた持続的な生活、すなわち民俗知としての文化を、今まさに失おうとしている」という一文があります。これを「里山危機」と表現して、民俗知の喪失の危機を共有できればと執筆したとあります。そして、自然を学ぶために里山で作業することについて、「作業するなら多くの人で楽しく、という話が出がちだが、このような場面では、生業として里山と真剣に向き合ってきた農業の矜持を理解した上で、単なるイベントにすり替えないことが重要だ」の言葉に深く同調します。

持続可能にも、持続可能には、人の知恵・営み・工夫が伴うこと。そんなことも痛感しました。美しい風景や植物の写真は必見です。

出版社 ‏ : ‎ 岩波書店
発売日 ‏ : ‎ 2021/8/10
単行本 ‏ : ‎ 80ページ
ISBN-10 ‏ : ‎ 4002710491
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4002710495

by AKIO_TAKE | 2022-06-15 22:11 | book