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day after day & 武松昭男のphoto日記

「どう扱ってもよい」という存在とされないように


江戸時代(1603年~1868年)における民衆暴力の考察からはじまる本書。江戸時代というと百姓一揆、その一揆とは竹やりや蓆旗(むしろばた ※1)をもった農民が領主や村の役人など、政治・社会の権力者に暴力で対決したようなイメージかありますが、実はそうではなくて・・。江戸時代初期の百姓一揆には一定の作法があって、竹やりの武器などを使うことはほとんどなく、つまりは暴力的ではなかった。一定の作法とは、年貢や役の軽減などを村の役人が領主に文書で願い訴える「訴願(そがん)」のことで、合法的なやり方と見なされて罰さられることなかった。しかし訴願が認められなかったとき、百姓は非合法的な行為をもって訴願を領主に求めることがあり、それが百姓一揆(何を百姓一揆とするかは諸説あるそうです)。

時は進み・・
18世紀後半から百姓一揆に変質が見られるようになり、18世紀末から19世紀初頭以降、一定の作法を逸脱する事例が現れてきた。その理由として、近世史研究者の須田氏が18世紀に商品経済の進展に伴い、貧富の格差が拡大するという事態に対して幕藩領主が有効な政策を打ち出せなかったことを挙げています。

1781年頃から、幕府の収入源を確保するため重商主義の政策が取られたり、1782年からの天明の飢饉の際、幕府の対応は江戸を救うものであり、地方の農村への対応は不十分だったとされています。商品経済の発達に伴う政治の主眼の変化と気候変動によって避けがたく起きた飢饉などによって、百姓一揆の前提であった仁政(じんせい ※2)が機能不全に陥り、百姓一揆も徐々に暴力を伴い始めた。

この江戸時代の百姓一揆の変質を読んで、いま、地球上で起こっている紛争はまさに「歴史は繰り返す」。強権化が進んでいると言われる世界の政治・・その他の章もこれまでのイメージを崩されます。本屋さんで出会えてよかったと思える一冊。

※1 わらやイグサなどで編んだ簡素な敷物を旗に見立てた
※2 民衆に恵み深い政治

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出版社 ‏ : ‎ 中央公論新社
発売日 ‏ : ‎ 2020/8/20
新書 ‏ : ‎ 220ページ
ISBN-10 ‏ : ‎ 4121026055
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4121026057


by AKIO_TAKE | 2023-08-21 23:10 | book