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day after day & 武松昭男のphoto日記

市井の人の生きた時間


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2023年制作 中国映画「来し方 行く末 (こしかた ゆくすえ)」
公式サイト https://www.mimosafilms.com/koshikata/

この素敵な邦題に映画館へと誘(いざな)われました。しばらくお目にかかったことがない素晴らしい邦題です。本作の原題は「不虚此行(訳:この旅は無駄ではなかった」、英題は「All Eares(訳:耳を傾ける)」。

脚本家としてのデビューがかなわず、葬儀場での弔辞の代筆のアルバイトで生計を立てる主人公。思いのほか、弔辞が評判を呼ぶもののミドルエイジに差し掛かり、実家にも本当の姿を伝えることかできない。このままでいいのかと自問自答しながらも依頼者から故人の話を丁寧に聞き取り、誠意をもって、生前の故人を浮かび上がらせる弔辞を作成していく日々。作成された弔辞を披露するシーンはありません。「聞くこと」「傾聴」が作品の根底に、依頼者とのやり取りを描きながら故人と依頼者の関係性によって弔辞の内容は異なることは想像がつく。主人公の「事実は人によって違います」のセリフが、聞く人によって弔文に書かれることが違うことを物語っています。

「あの人は●●な人だ」という印象や評価は、故人になって、知人がふと漏らす一言がその故人を如実に表すものなのかもしれません。素朴なヒューマンドラマです。

主題歌「僕を抱きしめれば君は年を取らない」も美しいです。「どんな愛の表現も急いだほうがいい」「別れに流す涙は隠さなくてもいい」「息さえしていればいつか過ぎ去る」・・人生のはかなさを静かに語りかける歌詞が心に沁みます。

by AKIO_TAKE | 2025-05-02 22:44 | movie