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day after day & 武松昭男のphoto日記

描き出す「真面目な人ほど絶望する」社会


映画 「夜明けまでバス停で」
2022年製作 / 日本 / 91分

2020年、渋谷区のバス停でホームレスの女性が殺害された事件。 あの悲痛な出来事に着想を得て製作された映画を観ました。物語はフィクションですが、そこに描かれているのは、コロナ禍に露呈した「貧困」と「社会的孤立」という、まぎれもない私たちの社会の地続きにある実相です。

当時、政府が掲げたスローガンは「まずは自助、そして共助、公助」。 2025年になった今も、この考え方の優先順位は変わっていないように感じます。真面目に働いていても、社会保障費や物価高で手元に残るお金は削られ、ほんの少しのきっかけで職を失い、日常が崩れ去る。そんな現実がすぐ隣にあります。人間性や自由を破壊される恐怖を抱えながら、それでも無理をして笑顔で取り繕って生きる。あの頃の空気感は、今の私たちの生活の底にも、深く通底しているのではないでしょうか。

劇中、ホームレスとなった主人公の女性が、眠りに就く直前の男性に問いかけるシーンがあります。
「なにをお祈りしているの?」
「あしたこそ、目が覚めませんように」

この言葉が、胸に突き刺さりました。真面目な人ほど、社会の論理や規範を内面化し、「こうなったのは自分のせいだ」と自分を責めてしまいます。助けを求めることすら「迷惑をかけること」と考えてしまう。 この映画が映し出しているのは、個人の努力ではどうにもならない構造的な歪みそのものです。私たちが本当に目を向けるべきは、「自助」を強いることではなく、こうした絶望を生まないための「公」のあり方なのではないでしょうか。


描き出す「真面目な人ほど絶望する」社会_a0259130_21200659.jpg

by AKIO_TAKE | 2025-12-30 21:53 | movie