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2017年 10月 29日 ( 1 )

認識のズレ

横浜市でも家庭から出るゴミの分別がはじまって、かれこれ10年弱の月日が流れました。この期間に市民のみなさんにも「自分の出したゴミがどのようにリサイクルされているのか」ということに関心を持っていただけるようになりました。この関心を持っていただける機会が増えたことは、再生資源業界・廃棄物業界にとっては一つの大きなチャンスでした。

それまでは自分の出したゴミについて関心を持つきっかけが少なかったのですが、分別がはじまって、そして環境問題もこれまで以上にクローズアップされたことからゴミのゆくえに関心が湧きやすい情報が数多く提供されるようになりました。

一方で、再生資源業界にはジレンマが残ったまま、次の時代へと突入することになったと思います。廃棄物業界と比較して再生資源業界は企業規模の小さい会社が多く、今でも家族経営で頑張っている事業者が多い業界です。再生資源業界でも、特に古紙は市民にとって馴染があり日常的に触れる資源物ですので、ここから先は古紙を例にして考えてみたいと思います。

市民のみなさんは、新聞・雑誌・ダンボール・その他の紙・牛乳パックに分別して出した後に、どのようなプロセスを経てリサイクルされているかに関心を持ちます。これは考えてみれば至極当然のこと。市民は行政から「古紙を焼却せず、リサイクル(再生資源)するために分別してほしい」と呼びかけられ、市民はその呼びかけに丁寧に応えてきたわけです。だから、分別して出したはいいけれど、その後ちゃんとリサイクルしているんだよね?ということが気になって仕方ない、という方がいても不思議ではありません。

市民の知りたいことにきちんと向き合い正しい分別情報を提供して、さらに品質の良い古紙の回収量を増やして、リサイクルの質を向上させたいとの思いから始めたのが「リサイクル出前講師」でした。情報提供の機会としては足りていないかもしれませんが、この10年弱で出前講師もひとつの役割を果たしたと思います。出前講師を実行することで「紙」そのものにも少しは詳しくなりましたし、それを市民に情報(なぜ、分別するのか?)として提供できるようにもなり、市民の知りたいことに応えられるようになったと思います。

他方でかつてとあまり変わらず回収量だけにしか関心を持たない、という現実も業界内にはあります。当然のことながら、回収量をアップしなければ事業の停止に繋がってしまうし、回収量アップは経営基盤安定のための重要な要素であることには変わりません。ただ、分別排出してくれる市民の知りたいことに関心を持たず、回収量が関心事のほとんどでは双方向のコミュニケーションとはなりにくい。少子高齢化や紙自体の軽量化、オンラインに取って代わられる紙量の増加というこれからを想定すれば、紙の排出量、つまり各事業者の取扱量は減少して市場が縮小していくことも経営判断の指標の一つになりますし、すでにそうした時代に入っています。

これからは徐々に取扱量が下がっていく時代です。この徐々に取扱量が下がっていくこと自体も数年前から古紙回収業界では承知の事実でした。この間に、市民の知りたいことに向き合うことができた事業者は「次の市民の知りたいこと」にも対応できるでしょうし、こちらから品質の良い古紙の分別排出を促す行動指針を産み出すことが出来るはずです。しかし、家族経営で頑張っている事業者へのフォローが十二分に出来ていないと指摘されることもあります。

古紙回収業界の方達が、どの方を「顧客」と捉えているのかも事業者によって異なると思いますが、顧客とのコミュニケ―ションにおいて最も恐れることは認識のズレだと思います。市民の知りたいことと回収業者として知りたいことを完全無欠に合致させることは不可能です。しかし、そのズレが大きくなればなるほど、顧客の要望は聴いているが実質的には無視していることになります。顧客は聴いたフリと判断し、その結果は想像に難くないということになりかねません。

市民や顧客は「紙がどのようにリサイクルされているか」「紙についての知識を得たい」と「紙の質」に関心を持つことで環境に役立ちたいと思っていても、回収側は「紙の回収量」のみから関心の軸が動かない、だとしたら・・・。
古紙回収業界に限らず、どの業界、分野でも留意する必要がある事かもしれません。私自身にも改めて関心の軸を問いながら、奮闘する小規模事業者のフォローも見逃さぬように情報発信したいと思います。


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by AKIO_TAKE | 2017-10-29 12:26 | 3R